2012.08.26   GE:リンドウさんとシュン
冷たい地面に横たわっていると、軽快な足音が近づいて来るのがわかった。足音はシュンのすぐ側で止まり、ややあって肩を叩かれる。

「……おい、大丈夫か?」
リンクエイドされた途端にシュンが跳ね起きた。傍らのリンドウを睨みつけて、悔しそうに唇を噛む。
「言っとくけど、さっきのはちょっと油断しただけだ!」
言葉だけは威勢が良いが、うっすらと眼に涙を浮かべているシュンをリンドウは面白そうに見下ろした。
「何ニヤニヤしてるんだよ。いいか、俺の実力はこんなモンじゃないんだからなっ!!」
「おお、それだけ騒ぐ元気があればまだ頑張れるな。さっきのオウガテイル、あっちの方に行ったぞ」
止めを刺して来い、と言わんばかりのリンドウに、シュンが顔を引き攣らせた。
「え、あ、ちょっと待てって!まさか俺一人で行けっての!?」
「当たり前だろ?お前の初任務だろうが。ま、サポートはしてやるから安心しろ」
「安心できるかよっ!またさっきみたいにやられちまったら、どうすんだよ!」
「ん?お前の実力はあんなモンじゃないんだろ?期待してるぜ」
からかうように笑ったリンドウを恨めしそうな顔で見上げる。
「……あんまりいじめんなよ。大人気無えぞ」
「最初に『俺一人で充分だ』って言ったのはお前だろ?」
自分の発言には責任を持たないとな。リンドウは意味ありげに口の端を持ち上げた。
先程の遭遇を思い出したのだろうか、唸り声を上げてシュンは頭を抱えてしまった。彼の中では色々な葛藤があったようだが、背に腹はかえられない。一瞬の躊躇いの後に、視線を逸らしたままぼそりと言った。
「……一人だと難しいので、手伝って下さい。────オネガイシマス」
「あー、よく出来ました、と。じゃ、さっさと倒してアナグラに帰ろうぜ」
ほんの少しだけ泣きそうな顔をしているシュンには気付かないフリをして、リンドウは新人の後頭部を軽く小突く。そんなに強く叩いたつもりはなかったが、シュンが頭をさすりつつ物言いたげな眼をリンドウに向けてきた。
「何か言いたそうだな?」
「今、アンタが触ったところ、たんこぶがあったみたいで凄え痛いんだけど」
「本当か?そりゃ悪い事したなあ」
そう言ってリンドウがシュンの頭に手を伸ばすと、その手を払いのけて慌てて距離をとる。
「触ろうとすんなよっ!痛えって言ってるだろ!」
「そういやそうか。すまんな」
悪びれた様子の無いリンドウに、馬鹿じゃねえのと小声で呟いてシュンは唇を尖らせた。
2010.11.25 up
以前memoにアップしたものです。2年前とか…!
シュンは生意気な感じなのが可愛いと思います。
#2