Menado Ensis

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GOD EATER

「何だ、元気そうじゃないか」
水でも飲もうとジーナが自室を出た矢先に背後から声をかけられた。
振り向くと不機嫌そうな顔をしたカレルが立っていて、手に持っていた飲み物をジーナの方へほうってよこす。それを両手で受け止めてジーナは笑いかけた。
「カレルじゃない。どうかしたの?」
「どうって……。ここ何日か全然見かけないしメールの返事も無いから、そんなに怪我が酷いのかと思って、こうして様子を見に来てやったんだろうが」
眉をしかめて呆れたように話すカレルに、先ほど受け取った飲み物を軽く持ち上げてみせる。
「あら、そうなの。じゃあこれはお見舞いなのかしら?」
「う、まあ、そんなところだ」
「嬉しいわ。ちょうど喉が渇いていたところなの。ありがたくいただくわね」
ジーナが礼を言うと、カレルは照れくさそうにそっぽを向いた。そのまま目線を合わせずに口を開く。
「で、怪我の具合はどうなんだ?」
「もう大分良くなったわ。──さっきまで眠っていたから、まだメールチェックはしていなくて。貴方からのメールも気付かなくてごめんなさいね。あとで確認しておくから」
「っ!メールは、もう見なくていい!!」
慌てたように言うカレルを、ジーナはまじまじと見つめて軽く首を傾げる。
「どうして?」
「次の任務についてのメールだったから、ここで伝えれば用件は済む」
一度しか言わないからよく聞けよ、とカレルが面倒臭そうに頭を掻いた。


「──業務連絡は以上だ。何かわからない事があったら、リンドウさんにでも確認してくれ」
「わかったわ。丁寧な説明をありがとう」
「礼を言う必要は無い。これも仕事のうちだからな」
「それもそうね」
「フン。まあ、せいぜい任務までに体調を整えておく事だな。足を引っ張ったりしたら容赦しないぞ」
「ええ、覚えておくわ」
じゃあなとカレルが足早に去っていくのを小さく手を振って見送る。その背中が見えなくなってから、ジーナは自室へ戻る為に扉を開けた。
カレルから聞いた任務の内容は至って普通で、何をそんなに慌てる必要があったのかしら、と思案するが男の子の考える事はよくわからない。

(こんな気持ちのままで任務に行ったら、足手纏いになってしまうかもしれないわね……)

こうなったら仕方が無い。メールは見なくていいと言われたが、このままでは任務に支障をきたしてしまう。
「足を引っ張るなと言ったのは、カレルの方だものね」
ジーナは口元に笑みを浮かべると、カレルからのメールを読むために端末を手に取った。


2011.03.21 up