Menado Ensis

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GOD EATER

少し緊張しながらの適合検査を終えたジーナは「メディカルチェックまでここで待つように」という指示に従い、エントランスのソファに腰掛けた。
ほっと一息ついて、ぼんやりと自身の右手の赤い腕輪に眼をやる。一度腕にはめてしまえば二度と外す事は出来ないという神機使いの証。これで自分もその一員になったという事らしいが、いまだ実感は無い。

そのうち嫌でも自覚するかしらと考えながら自分の順番を待っていると、エレベーターから男の子が降りてきた。
口笛を吹きながら歩いてくる男の子をなんとはなしに眺めていると、ふと男の子と眼があった。そのまま眼をそらすのも気まずいだろうと思い、にっこりと笑いかけると男の子も笑顔になりジーナの方へ近寄ってきた。座っているジーナの眼の前に立つと、好奇心もあらわに話しかけてくる。
「なあなあ、あんたが今度来るっていう新入りか?」
「ええ、そういう事になるかしら」
「やったあ!ついに俺にも後輩が出来たぞ!」
男の子はその小さな体で喜びを表すと驚いているジーナに向き直り、勢いよく喋りだした。
「俺も最近入ったばっかりでさあ。実戦はまだなんだけど。リンドウさんとか会う度に子供扱いするんだぜ。もう頭に来るよな!俺はもう一人前だっつうの。──あ、俺の事は先輩って呼んでくれよ、な?」
「そうなの。よろしくね、先輩」
ジーナが先輩と呼んだ事で機嫌が良くなったらしい。男の子が得意気に胸を張る。
そういうところが子供っぽいんじゃないかしら、と思ったが口には出さずに心の中にしまっておく事にした。
「そういえば、名前聞いてなかったよな。俺はシュンっていうんだ。お前は?」
「ジーナよ」
「ふうん。何か女みたいな名前だな」
「みたいじゃなくて、女なのよ」
ジーナがそう答えるとシュンは疑わしそうな顔になり、僅かに目線を下に向ける。
「ええ?本当かよ。だってお前、あんまりスタイル良くないじゃん」
シュンの言いたい事を察して、大人気無いとは思いつつも、ジーナは自分に正直な行動に出た。ツバキさんはもっとこう、と身振り手振りで説明しているシュンの頬にそっと手を伸ばしてつねる。もちろん、徐々に力を込めていくのも忘れない。突然のジーナの行動にシュンが悲鳴を上げる。
「痛えっ!何するんだよ!!」
「ふふ、世の中にはね、言ってはいけない事もあるのよ」
泣きそうになっているシュンに、ジーナは口元に意地の悪い笑みを浮かべて言った。

「一つ勉強になったわね、先輩?」


2011.01.29 up