Menado Ensis

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GOD EATER

「──という感じで行こうと思う。出来そうか?」
「はい!大丈夫です、任せて下さい!じゃあ撃ちますね。……おらあっ!!」
「っ!?いきなり何をするんだ!」
「うるさいわね、そんな所にぼーっと突っ立ってないでくれる?邪魔なのよ!」
「じゃ、邪魔だと……?!うわっ!」

カノンの高笑いと共に爆音が響き、休憩していたタツミの隣へブレンダンが吹き飛ばされてきた。すでに身を持ってカノンの威力を味わっていたタツミが苦笑しながら声をかける。
「派手に飛ばされてきたけど大丈夫か?」
「ああ……何とかな。リンドウさんが『背後に気をつけろ』って言ってた意味がわかったよ」
「まったくだ。このままじゃ危なくて一緒に戦うのは無理だよなあ」
タツミがぼやくのと同時に、カノンが心配そうな顔で走り寄ってきた。
「大丈夫ですか〜?」
「ああ、こちらは大丈夫だ。今のやり方は向いていないようだから、違う方法でいこう」
そう言うとブレンダンは埃を払って立ち上がり、カノンを伴って訓練用ターゲットの前まで移動した。二三やりとりしてカノンが力強く頷く。今度こそはと思ったが、カノンが神機を構えると再びブレンダンは吹き飛んだ。
「こいつは手強いねえ。……さてどうしたものか」
何度吹き飛ばされてもめげずに違うやり方を模索するブレンダンをしりめに、タツミは壁にもたれかかると高みの見物を決め込んだ。


「少し休憩しよう」
疲労を感じたブレンダンが中断を申し入れ、カノンと一緒にタツミの方へ近寄ってきた。片手を上げたタツミをブレンダンは怪訝そうな顔でみる。
「よう、お疲れ」
「……何をにやついているんだ」
「ちょっとな、昔を思い出してた」
「昔?」
問いかけながら隣に腰を下ろす。カノンもタツミの正面に座り込んで首を傾げた。
「楽しい思い出ですか?」
「うーん、楽しいっていうか……。ソーマもよくツバキさんに怒られてたなあ、とか」
「ソーマが?」
「あいつ、今でこそ多少は人の話を聞くが、最初の頃は全然聞かなくてさ。命令違反ばっかりで、しょっちゅうツバキさんに雷落とされてた」
肩をすくめたタツミにブレンダンが僅かに口元をゆるめる。
「『わかるまで何度でも言うぞ』か?」
「そうそう、それ。一ヶ月くらいずっと言われ続けてソーマが根負けした」
「そして今に至る、と。ソーマに譲歩させるとは、ツバキ教官は流石だな」
「むしろ一月耐えたソーマが凄すぎるだろ。俺には絶対無理だね。だって怖いもん」
おどけたように笑うタツミにつられて、ブレンダンも笑みを浮かべた。和やかな雰囲気の中、カノンがためらいながら尋ねてきた。
「あの……」
「ん?」
「ツバキ教官は、やっぱり誤射とかしなかったですよね……」
私なんかと違って、と落ち込んでいるカノンにタツミが笑いかける。
「いや、たまに誤射してたよ」
「えっ!本当ですか!?」
「まあ、大体は他の連中が間違って斜線上に入ったからなんだけどさ。でも狙って当ててる時もあったみたいだぜ」
「狙って誤射、ですか……?」
思ってもみなかった事を言われたカノンが眼を瞬かせた。
「ああ。仲間が危ない時に撃ってぶっ飛ばして助けたりしてたみたいなんだな」
「──それだ」
それまで黙って二人のやりとりを聞いていたブレンダンが口を挟む。
「何だって?」
「誤射を減らせないのなら、効果的に使えばいい」
「効果的……ですか」
「そうだ。例えば、回復弾のような味方に当てても平気なものを使ったり」
「おお!それはいいなあ。カノン、いっそのこと衛生兵になってみたらどうだ?向いてるんじゃないか」
タツミがカノンへ水を向けるとブレンダンも頷いた。
「そうだな。確かにカノン向きだと思う」
「私向け……」
「嫌なら無理強いはしないが、一度だけでも試してみないか?」
ブレンダンの提案にカノンは勢いよく立ち上がる。
「私、やりますっ!誤射を活かして誰かを助ける事が出来るかもしれないなんて、考えた事もありませんでした!」
タツミも立ち上がり、興奮気味に両拳を握るカノンの肩を軽く叩く。 「よし、そうと決まれば準備しに戻ろうぜ」
「ああ」
ブレンダンも腰を上げ、カノンの背を叩くと踵を返した。


2011.10.10 up