Menado Ensis

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GOD EATER

01.No subject 【カノンとジーナ】

暇だから仕事でも受けようかとジーナがエントランスを訪れると、何やら難しい顔をして端末を睨みつけているカノンを見つけた。
珍しい事もあるものだと退屈だったのもあって思わず声をかける。
「そんな怖い顔をしているなんて珍しいじゃない。一体どうしたの?」
「あ、ジーナさん」
「まさかとは思うけど、変なメールが来たとか?」
笑いながらカノンの手元の端末を覗き込む。画面に表示されていたのは、何の変哲もない任務のメールだった。ブレンダンからの連絡だったようで、用件のみの短文がどこか不器用な彼らしい。
別段おかしい所が見受けられず、ジーナは首をかしげた。
「──特に変な事は書いていないようだけれど?」
「それはそうですよ。ブレンダンさんがそんな変な事するわけないじゃないですか」
「じゃあ何が問題なの?」
「……その、大した事じゃないんですけど」
おずおずと画面の一部を指差した。
「件名なしっていうのが、ちょっと気になって……」
言われて見れば、確かにずらっと件名の無いのメールが画面に並んでいる。
「そうねえ……。これはちょっとわかりにくいかもね」
「やっぱりそう思います?」
「まあ、彼はいい人だから『わかりやすい題名をつけて』って言えば、きっと対応してくれるんじゃないかしら」
「うーん。わかりました、今度お願いしてみます!」
意を決した顔で両手を握るカノンの肩に手を置いて、ジーナはにっこり笑った。
「悩みも解決したところで、良かったら今から一緒に任務に出かけない?」
「ええっ!?これからですか?今、夜中ですよ!?」
「そうなの。何だか寝付けなくて。暇だし身体を動かせば良く眠れるかしらって思って」
大丈夫、すぐ戻ってくるわよ。有無を言わせぬジーナの笑みに、カノンはがっくりと肩を落とした。


2012.04.22 up
ブレンダンは、あんまり細かい事を気にしないか神経質かのどっちかだろうなあと妄想した結果。
『件名なし』の次は『任務について』のメールで画面が埋まりそうですね。



02.Unknown 【ブレンダンとシュン】

ブレンダンがエレベーターを降りると、にこにこと上機嫌なシュンが近づいてきて手に持った端末を見せてきた。
「なあなあ、ちょっとこれ見てくれよ」
そう言って差し出したのは、霧が深い風景の中にうっすらと何かのシルエットが映っている画像だった。
「何だ?これは。……あまり鮮明に映ってないようだが、生き物の画像か?」
「この間の任務で偶然撮れたやつなんだけどさ、俺は新種のアラガミだと思うんだよな!」
「新種のアラガミだと?」
シュンの言葉を受けて、ブレンダンは真剣に画像を見つめる。新しいアラガミが出たという話は聞いた事が無いが、事実ならこのまま捨て置けない。
「カレルに話したら馬鹿にされたんだけどさ。なあ、あんたさえ良かったら、これから調査しに行かないか?」
好奇心旺盛なシュンの提案にブレンダンは頷いた。
「わかった。この話が本当なら、調べて報告しなければならないからな」
「やったあ!!じゃあ、準備が済んだらエントランスに集合な!」
「了解した。すぐに行く」
満面の笑みのシュンとわかれると、急いで準備をするべく自室に戻った。


2012.04.22 up
二人ともUMAとか好きそうですよねと言ってみる。
個人的にブレンダンとシュンの組み合わせは面白そうだなあと思います。



03.Anonymous 【タツミとカレル】

「ここに居たのか」

背後から声をかけられたタツミが振り返ると、カレルが足早に近寄ってくるところだった。
カレルに呼び止められる覚えは無かったので何事だろうと僅かに身構える。
そんなタツミをよそに、カレルはにやりと人の悪そうな笑みを口の端に浮かべた。
「そう警戒するな。あんたにとっても悪い話じゃない」
「……そんな事言われると、ますます不安になるぜ」
「あんた、確か竹田ヒバリに好意を寄せていたな?」
「ああ、そうだけど。それがどうした?」
自分がヒバリを好ましく思うようになったのは最近だが、隠す気は無いのでアナグラにいる人は皆知っている事だ。
わざわざ確認するような事だろうかと首を捻っているタツミに、カレルが人差し指を立てる。
「そんなあんたに朗報だ。とある情報筋から仕入れた情報なんだが、彼女の好きなものについて知りたくないか?」
嗜好品配給チケット一枚で手を打つぜ、と言うカレルに、タツミは疑わしげな眼を向けた。
「──その情報が事実なら知りたいけどよ。信用できるのか?」
「安心しろ。匿名にする約束だから誰とは言えないが、まず間違いなく真実だ」
カレルが得意気に胸をそらした。まだ完全に信用した訳ではないが、元から彼女についての情報など持ってないのだ。偽物を掴まされたところで大した痛手ではない。
「よし、わかった。ヒバリちゃんの好きなものを教えてくれ」
「交渉成立だな」
チケットを寄越せとカレルが右手を差し出す。応えるように上着のポケットに手を突っ込んで、タツミの動きが止まった。
急に動かなくなったタツミを訝しげに窺うと、タツミが情けない顔で笑う。

「…………後払いでもいいか?」


2012.04.22 up
タツミさんはちょっと抜けてるくらいが可愛いと思います。



04.Untitled 【カノンとソーマとシュン】

装甲車を降りてカノンは背伸びをした。任務が無事に終わった安心感から安堵の息が漏れる。
「うーん、やっぱりアナグラに戻ってくるとほっとしますね」
微笑んで仲間を振り返る。いまだ運転席に座るソーマの顔色は悪く、後部座席のシュンは突っ伏したまま起き上がる気配も無い。
「二人ともどうしたんですか?早く報告に行きましょうよ!」
「そんな元気もねえよ……」
顔も上げずに力なく手を振るシュンをカノンは不思議そうに見つめていたが、気を取り直して運転席から降りてきたソーマに話しかけた。
「あの、私、今日は誤射が少なかったと思うんですっ!」
「………………そうか。良かったな」
「はい!お二人と行くと何だか調子が良いみたいです。また次もよろしくお願いします!」
嬉しそうなカノンと対照的に、ソーマの顔色はますます悪くなる。次、と聞いて持っていた神機のケースを取り落とした。
「大丈夫ですか?どこか具合でも」
悪いんですか、と言おうとしたカノンの両肩を掴む。驚いた表情のカノンにソーマが真顔で訴えた。
「……いいか。次にまた一緒に行動する時は、へたに動き回るんじゃねえぞ」
「えっ?でも、私だって援護射撃をしないと……」
「援護は必要ない。だから、──頼むから、俺の後ろに立たないでくれ」
腑に落ちない顔をしているカノンに向けて、いまだ後部座席に横たわっているシュンが頬杖をつきながら声をかける。
「そうそう。お前は固定砲台なんだって事だよ。つーか寧ろ邪魔?」
今日は調子が良かったと自負していただけに、この言葉にはほんの少し傷ついた。けれども珍しいソーマのお願いに、カノンは不承不承ながらも頷いた。


2012.04.22 up
カノンの命中率は五割程度らしいですが、二発に一回当たれば凄くない?と思うヘタクソな私です。
他の人はどれくらい命中させているのか気になります。



05.Nameless 【タツミとブレンダンとカノン】

「なあ、聞いたか?今度新人が来るんだってな」
ミーティングを終えて軽い雑談中に、タツミが思い出したように言う。
「ああ、聞いた。遠距離型神機使い一人に噂の新型が一人だろう」
「どんな人なんでしょうねえ。怖くない人だといいんですけど」
彼らの興味はまだ見ぬ新型の神機使いにあるらしい。二人であれこれと言い合っている。
「新型も気になるけど、俺はやっぱりツバキさんの後釜が気になるね」
「ん?どういうことだ?」
「何でもその新人が適合した神機が、ツバキさんの使ってたヤツらしいって聞いてさ」
「わあ、そうなんですか!凄い偶然ですね」
「ツバキ教官が使用していた神機となると、かなり強化されている物じゃないのか」
「そのはずだ。新型と併せて、かなりの戦力強化になるんじゃないか、ていうのが俺の予想だ」
そう言ってタツミが片目を瞑ってみせる。ブレンダンも腕を組んで同意を示した。
「そうだな。これで少しでも生存率が上がるといいんだが」
しんみりとした空気を払うように、カノンが笑顔で握った拳を突き上げる。
「その為にも、私、今日の任務で命中率を八割キープしてみせます!」
「おっ言ったな。期待してるぜ、カノン」
「そこまで言うからには、達成出来なかったら罰ゲームでもしてもらおうか」
「そりゃいいな。よし、カノン。出来なかったら腕立て伏せ百回な」
意地の悪い笑みでカノンに宣言してブレンダンは立ち上がった。続いてタツミも出口へ向かう。
「えっ、ええーっ!?そんなあ、酷いですよ二人ともー!」
呆気にとられているうちに決まってしまった罰ゲームに文句を言いつつ、カノンも任務に向かうべく二人の後を追いかけた。


2012.04.22 up
たまには三人で和気藹々と雑談もいいよね!という思いつきから。
誰かの使っていた神機に適合する人は意外と少ないんじゃないでしょうか。そのうちエリックの神機にも新しい適合者が来るのかな。